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[ おほやけ =公= 《戦略情報研究所会員向け情報 No.142 19.8.9》]

■中国の黒いワナ
        青木直人(ジャーナリスト)

 参議院選挙で安倍内閣が大敗した。もはや死に体と見ていい。政権の存続に一
抹の期待を抱く向きもあるが、それは願望にすぎない。安倍氏に残された選択肢
は「拉致全面解決」と「戦後政治の脱却」を自爆覚悟で訴えていく以外にないだ
ろう。

 最初の関門は11月に期限が切れるテロ特措法である。民主党は倒閣と衆議院
解散を目的にして、サボタージュを始めそうだし、米国も6者協議での日本側の
譲歩を狙って、この行方次第では安倍内閣批判に踏み出す可能性もある。

 現在、6者協議の場で、参加国中、日本だけが拉致問題解決を最優先して「孤
立」している(もちろんこれでいいのである)。会議の主導権は米国と中国にあ
る。当然、日本は両国に対して外交的なイニシアティブを握っておくべきだった
のだが、安倍政権1年の成果は乏しい。米国と中国に対して日本が影響力をもつ
カードが次々になくなりつつある。

 なかでも対中外交は致命的である。それは、両国で合意した「戦略的互恵関係
」の実態が当初言われたように、中国が北朝鮮に対して拉致で圧力をかけるので
はなく、日本の側が一方的に中国に対して援助を本格化するものに変わっている
からだ。

 驚くべきことだが、安倍内閣の下で、08年に中止されるはずの対中ODAが
着々と復活に向けて動き始めている。

 ODAは「中国に強」く、「小泉首相の後継者」である「保守のプリンス」安
倍晋三政権下で、再開されるはずである。2006年8月、小泉退陣を前にして北京で
、外交政策に関する最重要会議・「中央外事工作会議」が開催された。最高指導
部9名の政治局常務委員全員が出席し、胡錦涛共産党総書記と温家宝首相が演説し
た。この場で、中国はそれまでの反日外交を転換し、靖国神社参拝など歴史問題
では譲歩しないが、今後は「国内の経済建設の安定のため」に日本との関係改善
を進めていくことが決議された。方針は直ちに中国各地の共産党委員会や地方政
府に伝達され、中央宣伝部監視下にあるメディアの放送内容もこの決議の方向に
統一された。それ以後、新聞などの日本の対中ODAへの言及率は急速に増えて
いる。

 中国は小泉時代を「暗黒」と呼ぶ。理由はODA廃止が決まり、同時に、日本
からの投資が激減したからだ。これにはいまも歯止めがかからない。

 こうした両国関係に危機感を高めたのは胡錦涛だけではない。日本の財界も同
様だった。いまや世界企業となったトヨタなど多国籍資本にとって、儲かるとこ
ろが祖国である。彼らは小泉参拝に激しく噛み付いた。中国とのトラブルがビジ
ネスチャンスを失うことになったからだ。安倍内閣の課題は「憲法改正」。安倍
はそのために長期政権を狙い、前政権当時に悪化した財界との関係修復を急いだ
。これが就任直後の中国訪問で、環境や省エネ分野の協力が「戦略的互恵関係」
として打ち出された背景なのだ。

 これでは政府やその取り巻きたちから「拉致問題解決のために対中ODAを中
止せよ」の声があがろうはずがない。それどころかこれからどんどん援助を増や
すと言うのが政権の方向性だ。協力は4月の温家宝中国首相の間で相互に確認さ
れ調印されている。

 中国の食い逃げを許した安倍内閣に日本のもつ最強カード(経済援助)はない
。当然中国が拉致で協力することはなく、逆に、今後は切り捨ての「決断」を迫
ってくるだろう。

 今日発売される「中国の黒いワナ」にはそんな話が詰まっている。荒木和博氏
や佐藤優氏との対談もある。昨年夏増元照明氏とアリバイ会見した「中日友好協
会」の正体も知ってほしい。

※(編集部注)「中国の黒いワナ」は宝島社から「別冊宝島Real 73」として発売
されました。ぜひ書店でお買い求め下さい。

■戦略情報研究所講演会

 次回の戦略情報研究所講演会は下記の通り開催されます。参加出来ない方もイ
ンターネットでの生中継を行いますのでぜひご覧下さい。

1、日程 8月31日(金)18:30〜20:30

2、場所 UIゼンセン会館2階会議室(千代田区九段南4-8-16 tel03-3288-3549

 ※市ケ谷駅下車3分 日本棋院斜向い (地図は下記をご覧下さい)。

3、講師 高ヨンチョル・コリア国際研究所研究員

4、テーマ「国家情報戦略」
※先月講談社+α新書からテーマと同タイトルの著書(佐藤優氏との対談)が発売
されています。

5、参加費 2000円(今月から戦略情報研究所の会員の方は有効期限中開催され
る講演会は何回でも参加できるようになりました)。

6 参加申し込み
 今回は会場に余裕がありますので事前のお申し込みは不用です。


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[ おほやけ =公= 《戦略情報研究所会員向け情報No. 138 19.6.21》]

■「不審」船

                      荒木和博(戦略情報研究所代表)

 青森県の深浦港に漂着した船の4人は、16日韓国に移送された。
 これで一件落着、ということらしいが、どうも入ってくる情報は「?」という
ものが多すぎる。とりあえず気づいたことだけ追ってみたい。

 深浦の港に北朝鮮の小舟が辿り着いたのは6月2日である。乗っていた4人の話
によれば5月27日に北朝鮮東海岸の清津を出てやってきたという。この間の直線距
離は約850キロ。7日間フルに走ったとして1日120キロ、平均速度は3ノット程度と
いうことになる。

 しかしこれはあくまでまっすぐ走れたらであって、そんなことはできるはずが
ない。ちょっと荒れた海なら、あんな小舟では横から波を受ければひとたまりも
ない。しかも最初のうちは海が時化ていたというのだから、当然必死に船を波に
向けて走らざるをえないだろう。まさか波が青森の方向から真っ直ぐにやってき
たということはありえないし。逆に清津から青森へ、真っ直ぐに波に乗って行っ
たとも思えない。ちなみに特定失踪者問題調査会では現在ペットボトルにビラを
入れてロシア側から北朝鮮東海岸に流すことを検討しているが、北朝鮮の東海岸
は北から南へリマン海流が流れているのである。さらに、そもそもあのエンジン
で一週間走り続けられるのかとか、疑問だらけである。

 そして、この4人に対して政府はろくな聞き取りもせず韓国に出してしまった。
 あるいは政府は何か隠しているのではないか。そうでなければ、「知りたくな
い」のではないか。知ってしまえば隠していたことに責任が生じるが、知らなけ
ればそれまでだからである。

 深浦に4人が辿り着いてから5日後の6月7日には、北海道の松前沖で無人の北朝
鮮船が発見されている。報道関係者から写真を見せてもらったが、この船の船尾
には「ラクサン」とハングルで記されていた。漢字で書くと「洛山」であろう。
東海岸の北の端、ロシア国境から40キロほどのところにこの地名がある。町全体
が自由貿易地帯になっている羅先市の湾の一つである。自由貿易地帯は普通の人
間は居住できない。この標記が船籍地に基づくものであれば何らかの上の階級に
属する人が所有ないし管理しているものであったはずだ。

 日本に在留中、4人は徹底して外部から隔離された。記者会見もなかったし、い
わんやマスコミの個別取材はできなかった。6月6日に青森からヘリコプターで陸
上自衛隊霞ヶ浦駐屯地に送られたときには、4人のうち1人が帽子を被せようとし
た係官の手を払った様子が写されていた。もし、北朝鮮に残った家族のことが心
配だとかいうことであれば、自分から顔を隠すだろう。他の3人もことさら顔を隠
そうというそぶりはみえなかった。その代わり、係官がビニールシートなどで盾
をつくってマスコミから遮断していたのだ。ヘリコプターも窓は完全に遮蔽され
ていた。つまり、彼ら自身ではなく、日本政府に彼らを隠す理由があったという
ことであろう。

 聞こえてくる話では1週間洋上にいたわりには身なりが良すぎるとか、 残余の
軽油の量が多すぎるとか、所持品が普通の人間が持てるものではない等不自然な
ことが多い。一つの仮定だが、あの船は日本近海まで工作母船に乗せられてきて
、近くで分離されたのではないか。そして、彼らは何かのメッセージを持ってい
たのではないか。

 韓国に入った4人について、韓国政府は「一般の脱北者」としているのこと。そ
うではないことは明らかなのだから、これまた何か隠している。韓国政府の場合
はあの大統領だから当然にも思えるが、日本政府がそれでは困る。拉致事件もそ
うだが、一度隠せば、それをごまかすために永遠に嘘をつき続けることになる。
早い内に明らかにしてしまった方が国民はもちろん、政府にとってもプラスだと
思うのだが。

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[ おほやけ =公= 《戦略情報研究所会員向け情報No. 136 19.5.28》]

■「やさしい」日本人

青木直人(ジャーナリスト)

 日本人は中国情報に対して甘いとしか言いようがない。ウラを読むというクー
ルさがなく、主観的かつ情緒的な読み方をしてしまいがちなのだ。

 読売新聞が報じた拉致問題に中国が協力という報道に対して「救う会」と「家
族会」が出した声明を読めばそれは一目瞭然である。出口の見えない拉致問題の
現状に対して家族の方々がいらだちとすがるような思いをもちがちなのは十分に
理解できるのだが・・・・・。

中国の意図を推し量る際に、念頭におくべきは以下の点である。

(1)朝鮮問題の「解決」は中国の東アジアにおける覇権的な政治経済共同体設立の
ための第一歩となっている。北京政府は「北朝鮮問題」を中国の国益をベースに
して解決するとの強い意思をもっている。日朝正常化は中国外交にとって大きな
利益をもたらすだろう。

(2)報道されている「日中関係筋」のリークの事実関係がいまひとつわからないが
、この話が事実とすれば、これは中国側の焦りをあらわすものである(同時に手
詰まり状態にある安倍政権に近い筋が意図的に流して可能性も高い)。

 武大偉次官らが関わる日朝正常化交渉の遅延が党内で問題視されている可能性
もある。中国の政局は5年ぶりに開催される10月の共産党大会がらみで動いて
いるからだ。

(3)今大会は江沢民から胡錦涛へのリーダーシップ転換の大会となる。胡路線の特
色として「和解社会」と「国際社会との協調」が強くアピールされる。内外での
摩擦を避けようという臥薪嘗胆の姿勢である。
後者の外交的なシンボルが朝鮮半島の緊張緩和実現であり、日朝正常化により可
能となる日本からの経済支援も緊急性を帯びはじめている。だが、ここで引っか
かるのが日本人拉致問題である。安倍首相の第二回目の中国訪問が大会と同じ時
期に計画されている。

 それだけに今からの「中国の拉致解決への努力の姿勢」は不可欠である。

 なぜなら訪中では日本からの環境経済支援が具体的なテーマになるからである


 ニュースをリークした関係者は日本からの対中援助が日本国内から「中国の不
誠実さ」を理由にして批判の遡上にあげられることを危惧したのかもしれない。

(4)中国が北を怒らせてまで現状では日本に「協力」することは考えにくい。これ
は日本がなんら物理的な圧力を中国にかけてはいないからだ。だとすれば、現実
にはピョンヤン政権を刺激してまで、彼らが日本のためになにかをすると考える
のは幻想である。中国の本音は拉致切捨てにある。報道の背後にある思惑は日本
の世論動向を見るためのアドバルーン効果をもくろんだものかもしれない。

 いずれにしても今後は家族会の動向が注目である。中国政府は家族会(「救う
会」「調査会」)と直接接触を図ろうとしているからだ(事実ある日本人関係者
がひそかにコンタクトを取ってきた)。

 全面的解決は彼らの念頭には最初から存在していない。ここを崩せば日本の世
論は分断できる。

 日本政府内部のある勢力も中国のこうした「協力」を歓迎している。彼らも拉
致の全面的解決の勇気は持っていないからだ。

 繰り返す。この報道はそうした日中関係者の互いの利益を踏まえたデキレース
の可能性も否定できないのである。中国は北を刺激しないという範囲で「協力」
をしてくる可能性はある。

 それが拉致被害者・失踪者の調査報告であり、へギョンさんの北京大学留学で
あり、ニセ遺骨の中国での再鑑定という結果次第では諸刃の刃になりかねない提
案なのである。調査結果が「日本人全員死亡」であり、「ニセ遺骨ではない」で
あり、ヘギョンさんの口から「母は死にました」だとなると、これは6者協議開
催国中国政府の正式な調査結果という「権威」を持ちうるのである。事実かどう
かはその時点では重要ではないのだ。

 最初に「甘い」と書いたのは、こうした提案を聞いて、直ちに、中国が日本の
味方になってくれるのでは、と信じ込んでしまう私たちの脇の甘さなのだ。ある
いは中国が北に圧力をかけてくれると期待してしまうおろかさなのだ。

 中国が協力の代償としてつきつけてくる請求書に書かれた金額は決して低額な
ものではすまないだろう。

 中国がタダでなにかをしてくれるかどうか、中国人に聞いて見たらどうか。

 これが「善意」であろうはずはない。リアルなソロバン勘定であり、むき出し
の国益そのものだ。

 この報道に意味があるとすれば現状に対してあせっているのは我々以上に、実
は北京政府の側であるという事実があきらかになったことだ。

 それにしても「救う会」もニュースをありがたがっている場合ではなかろう。
これでは単に「安倍政権を救う会」である。「朝鮮屋」は純情なのか、無知なの
か、それとも腹にイチモツなのか。

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[ おほやけ =公= 《戦略情報研究所会員向け情報 No.133.  19.4.22》]

■(続)中国首相の日本訪問を読む

 青木直人(ジャーナリスト)

 温家宝中国首相の日本訪問は、今後も日本の経済技術支援を必要とする中国政
府のお家の事情と前政権当時、「政冷経熱」とまで表現された外交関係の悪化の
ため、大型ビジネスを受注できなかった日本財界の両者の思惑で実現した。訪日
は「暗黒の小泉時代」を「正常」にリセットするために必要なセレモニーだった
のだ。

 中国市場経済のさらなる発展に共産党政権の延命をかける中国にとってこれ以
上の対日関係悪化の選択肢はなかった。日本が動かずともいずれ中国は再び擦り
寄ってきたはずだ。この現実が多くの日本人にはわかっていない。

 中国では経済こそが政治そのものなのだ。経済成長だけが中国を大国化し、選
挙すら行ってない政権を国民が支持している理由は明日はもっと、豊かになると
いう国民の実感を獲得することに成功したからだ。さらに19年間におよぶ軍事
予算の拡大。これも経済成長の裏づけなしに実現しない。つまり中国共産党は旧
ソ連・東欧とちがい、成長を通じて「大砲」も「バター」も手にしえたのである


 そう考えればこの政策の転換などありえようはずもない。

 では躍進市場経済はなぜ成功したのか。外資の導入と外国市場の存在につきる
。つまり国際的市場経済システムに参入したことが成功の原因なのだ。日本に関
して言えば、日本の投資(ほぼ全体の10%)、

 ベスト3にはいる対日貿易、そして日本だけが与えた中国全体の60%にのぼ
る公的支援(ODA)の存在が鍵だったのだ。

 だが暗黒の前政権当時、ODA廃止が正式に決定し、反日デモで対中投資は激減し
た。その結果胡錦とう政権が全力をかける第11次5カ年計画に黄信号が点滅す
る。これでは経済運営に相当なダメージが及ぶ。危機感に駆られた政権は対日政
策の転換を図る。それが温首相の来日なのだ。中国はほしいものを手にした。
「共同プレス宣言」をみればそのことはよくわかる。領土問題、歴史認識、資源
紛争など「戦略的互恵関係」とされたテーマの大部分は先送りされた。(合意は
できなかったのだ。それが共同声明がでなかった理由なのだ)

 合意したのは両国の貿易経済関係の強化だけだったのだ。後は単なるリップサ
ービスにすぎない。

 北朝鮮による日本人拉致についても「理解」と「同情」しかない。中国政府は
当事者ではないので、その問題は日本と北でやってください、というだけのニュ
アンスなのである。仮に中国政府が日本政府の側にたって、主体的に協力すると
いうのなら、ここは「支持」(ZHI CHI)という言葉がなんとしても書き込まれ
る必要があったはずである。(すくなくても70年代、中国が本気で日本を反ソ陣
営に取り込もうとしていたときは、対日世論工作の意味もあって、日本の北方領
土返還闘争を公然と「支持」していたのである)。

 こうなってしまったのは、関係改善の性急さの足元をみられてしまっていたか
らだ。

 「両国の改善を急いでいるのは日本のビジネス界も同様だ。ならば今の段階で
は北を刺激するほど踏み込む必要はない」と。
ほかならぬ日本人政治家が中国を訪問し、和解を演出した。なかでも最悪は「日
本の良心」(人民日報)衆議院議長河野洋平の行動だった。

 彼と胡国家主席の会見は昨年12月、人民日報の一面、右方の上の場所にカラ
ー写真入りで掲載された。扱いは最高である。河野はこの場で、日本国際貿易促
進協会(国貿促)の会長に就任したことと、同会の会員企業のために胡主席に対
して「環境」「省エネ」そして「地域開発」の各分野で「国貿促への配慮」を求
め、(いずれも同会の会員企業が参入をめざしているビジネス分野だった!)日
本帰国後、直ちに、「北京五輪を支援する国会議員の会」を立ち上げた。その目
的は「五輪の協賛資金として日本企業から宣伝広告費やカンパを吐き出させるた
めの活動」(日中経済関係者)なのである。

 朝日新聞などが褒めちぎる政治家の裏の顔がこれである。まともな国家論も戦
略論もない政治家がビジネス界のお先走りとなってロビー活動を行うばかりか、
小泉前首相の靖国神社参拝を北京官僚たちとともに攻撃した。いわば同志撃ちで
ある。(あまり同志とは書きたくないのだが・・)これでは到底中国に対抗はで
きない。彼らは温来日の露払いをしたばかりではない。加藤紘一、山崎拓議員ら
は中国を訪問し、北京から足を伸ばして、中朝国境の町・丹東を訪問することを
決めている。丹東と北朝鮮の新義洲を一大経済ゾーンにしたいというのが92年
からの中国政府の狙いである。(西の丹東、東の豆満江が冷戦以後の開発戦略で
ある)。加藤らの視察は朝鮮労働党と強いパイプを持つ中国共産党中央連絡部(
王家瑞部長)の意向にそったもので、来るべき日朝正常化のこれも露払いが目的
である。

 いまや、崩壊したコリアロビーにかわって、チャイナロビイストたちが画策し
始めた日朝和解と正常化工作。この事実を私は最近出した「中国利権のタブー」
(宝島文庫)のなかで紹介した。すでに日朝正常化は金政権の延命のためにも、
中国の東アジア共同体構想(現代版朝貢システム)にとつても不可欠なものに浮
上しつつある。

 なのに国民の代表たる議員たちは反日デモの謝罪すら拒否した温首相の演説を
「友好的」にスタンディングで歓迎した。痴呆としか言いようがない。謝罪と援
助がセットになった「欺瞞の友好劇」が再開されようとしている。

注・(国際貿易促進会は冷戦時代、日本共産党の対中貿易セクションとして誕生
し、中国から代々木への貿易を通じて、「活動資金」が提供されていた。なかで
もここが扱った中国産の「うるし」は日本では重宝されていた。そればかりかい
まも中国からの政治家への賄賂ろ過機関との噂が耐えない。前会長は昨年死亡し
た橋本竜太郎元総理である)。
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